超能力者。
それは不可能を可能に変える力、科学では証明できないような超常現象を引き起こす者のことである。
現代では超能力と聞くとヤラセを疑ったり、そもそも超能力など存在しないと考える人が多い世の中だが、明治時代の日本には、国が認める超能力者が存在したという。
今回は国公認の超能力者・長南年恵について紹介していこうと思う。
長南年恵とは
長南年恵(おさなみとしえ・または、ちょうなんとしえ)は明治40年10月29日、山形県の鶴岡市に庄内藩士の長女として生まれた。
霊能者や超能力者として活躍した彼女は自らを「年恵」と名乗っていたが、本名は「登志恵」である。
幼い頃から不思議な力を持っており、大きな物を軽々と持ち上げ、力比べでは大男に勝ち、予言めいたことを発言するようになると、奉公をしている家から「巫女として開業してはどうか。」と勧められることもあったという。
明治40年10月29日に死亡、45歳という若さで亡くなった。
死因については、当時不治の病として流行していた結核に感染して亡くなったと言われているが、詳細は不明である。
数々の超常現象
年恵が起こした数々の超常現象は、学者でも科学的に証明する事はできなかったという。
以下は彼女が起こした超常現象の数々である。
① | 成人したにも関わらず、精神的にも肉体的にも幼い少女のようであり、歳を重ねているように見えなかった。 |
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② | 年恵の周りには神や仏が頻繁に現れ、彼女に憑依し不思議な舞を舞っていた。 |
③ | 幼少期から食事を多く摂る方ではなかったが、35歳になった頃からほぼ食事を摂らなくなった。
口にしたのは水とさつま芋を少しだけ。 それ以外の食べ物を口にすると嘔吐をし、血を吐くこともあった。不思議と肉付きが良かった。 |
④ | 排泄行為をあまりせず、排泄物の量も極端に少なかった。
入浴はしなかったが垢も溜まらず、髪の毛も毎日手入れをしているように清潔で美しかった。 |
⑤ | 空気中から「神水」と呼ばれる不思議な水を取り出した。
神水には赤・青・黄色など何色も色があり、密封してある空瓶に神水を満たす様子を大勢の前で披露した。 また、この神水はどんな病気でも治すことができ、一度に一升瓶14本分の神水を満たす事ができた。 |
⑥ | 多くの人々が神水を求めて年恵の元へ訪れたが、冷やかし目的で来ている者もいた。
密封された空き瓶に神水を満たす方法は同じだが、冷やかし目的の者には神水で瓶の中が満たされることはなかった。 |
⑦ | 年恵の噂を聞きつけた全国紙の新聞記者が疑いの目を向け「今すぐ目の前で霊水(神水)を引き寄せろ。」と要求したところ、瓶の中に水が入り、新聞記者は事実を認めざるを得なかった。 |
⑧ | 遠くにある物を自分の元へ引き寄せた。 |
⑨ | 自らを今いる場所とは違う場所にテレポーテーションさせた。 |
⑩ | 冷水に手をかざすと湯を沸かすことができた。 |
⑪ | 空瓶に手をかざすと甘酒を出現させた。 |
⑫ | 年頃を過ぎても生理がなかった。 |
⑬ | 家が鳴り始め、鈴や笛などの合奏が始まると近所の者が騒音を聞きつけて集まった。
その音の中で年恵は絵を描いていた。 |
⑭ | 自らの死を2カ月前に予言していた。 |
年恵の逮捕歴
明治28年7月。
神水という名前のいかがわしい水を使って、医師免許も所持していないのに「病を治療する。」とうたって詐欺行為を行ったとして逮捕され、約60日間勾留ののち、証拠不十分で釈放されている。
年恵は自らの超能力を証明するかのように、勾留期間中にも様々な超常現象を引き起こしていた。
① | 約60日間勾留されていたが、便所には排泄物が一切なかった。 |
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② | 入浴を禁止されていたが、体臭はせず良い香りが漂い、髪の毛も常に清潔だった。 |
③ | 一切の食事を摂らなかった。 |
④ | 外部と遮断されているにも関わらず「神水」「御守り」「経文」「散薬」などと言ったものを出現させた。 |
⑤ | 食事も取らず、排泄もせず弱っているはずなのに、一升瓶15本分の重さがある樽を軽々と運んだ。 |
⑥ | 蚊が大量発生した際、一人だけ蚊に刺されなかった。 |
⑦ | 何人もの係官が不思議な音色の笛の音を聞いた。 |
年恵はその後、二度にわたり逮捕されており二度目の逮捕の際、証拠不十分で無罪判決を受けたが、年恵に興味を持った弁護士が個人的にテストを申し込んだ。 テスト内容は以下のようなものである。
① | 全裸になり厳重に身体検査を行う。 |
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② | 年恵を密封された部屋に閉じ込める。 |
③ | 別室に置かれている密閉状態の空き瓶に神水を満たせるか。 |
テスト開始から5分程すると瓶の中に茶褐色の神水が湧き出て、年恵はその神水を裁判長に渡した。
ちなみに裁判長はちゃっかりその神水を持ち返ったそうだ。
この一件で裁判長が年恵の超能力を認めたことで「国公認の超能力者」と呼ばれるようになった。
生きながらにして神と呼ばれ、多くの人々の病を治し、命を救ったにも関わらず、何度も逮捕され、疑いの目をかけられた彼女の人生は果たして幸せだったのだろうか・・・。